舞鶴水産実験所 共同利用 教育 拠点

1.共同利用拠点とは

舞鶴水産実験所は文部科学省教育関係共同利用拠点(事業名:日本海における水産学・水圏環境学フィールド教育拠点形成事業)に認定されています。2011年度に初認定され、当初5年間の活動が高く評価された結果、2016年度から5年間についても再認定を受けました。当実験所は実習に適した河川流域から日本海固有冷水域(300 m以深)までの多様なフィールドと優れた実習施設・設備、実習教育コンテンツを有しており、全国共同利用教育拠点としてこれらを広く全国の大学の実習に提供し、水産資源生物の生産と水圏環境に関するフィールド教育に貢献することを目指しています。

2013年海洋系実習シュノーケル講習全国に設置された大学水産実験所の学問領域は、天然環境における魚介類生産とその管理・増殖に関する分野、及び人工環境下での養殖(いけすなどでの給餌飼育)による生産に関する分野に大別されます。舞鶴水産実験所は前者の天然資源生物の生産分野を対象として、生物生産を支える生態系・環境と増殖技術に関する教育と研究を進めています。とくに、日本海に設置されたほぼ唯一の国立大学水産実験所として(他に北海道大学忍路臨海実験所があるが常駐する教員はいない)、日本海の特色を活かした教育を推進しています。また、当実験所が保有する3000種30万点に及ぶ魚類標本は、我が国の大学の中では最大のコレクションであり、我が国の魚類分類学の基礎を築くとともに、当実験所における魚類学実習にも利用されています。このほか充実した飼育施設と飼育技術を有しており、栽培漁業のための種苗生産から水生動物の行動学まで、多様な分野の実習を行うことができます。

この様な特徴を活用して、農学・水産学以外の文系も含めた非専門分野の学生に対しては、フィールド実習を通して、人と自然の共生をテーマに水圏における資源生物の生産と環境を考える基礎を教育します。農学・水産学、さらに水圏生物や水圏環境を対象とした環境学系の学生に対しては、複合的な水圏生態系における生物資源生産の仕組みと保全・管理技術、水産資源の増殖技術、及び人間活動などによって生じつつある様々な課題の解決方策について体験的に学習させ、現場を基盤として持続可能な人間社会の構築に貢献できる人材の育成をめざしています。舞鶴水産実験所は、文部科学省教育関係共同利用拠点として、豊富なフィールド教育カリキュラムと実習施設・設備を有効に提供し、本学のみならず他大学の学生の人材育成にも広く貢献するために、共同利用型フィールド実習を企画・実施する役割を担っています。

卒業生 近藤桜さん(2013年度秋季公開実習・2014年度共同利用研究)

近藤桜さんは、名城大学3年生であった2013年に舞鶴水産実験所の秋季公開実習に参加しました。また翌年の4月からの1年間は、全国共同利用研究の制度を利用して舞鶴水産実験所で卒業研究を行っています。2014年の4月に大阪の海遊館に就職し、2017年5月16日から海遊館の運営する新施設ニフレルに異動しました。

20180910給餌卒業研究の受け入れを依頼してきた近藤さんの最初のメールには、「私は将来水族館で働きたいと考えており」と書かれていました。そこで、なるべく水族館につながりそうなテーマをと考え、「カワハギによるクラゲ摂餌の水温依存」というテーマで研究をしてもらいました。初志貫徹して水族館に勤務する近藤さんに、現在のお仕事と舞鶴での経験の関連について、お話を聞かせて頂きました。

 

 

 

「海遊館ではカワウソやカピバラの飼育を担当していました。哺乳動物を飼育する際は、飼育者と動物の関係を築くためにハズバンダリートレーニングを行うことが大切です。このため、海遊館では動物と過ごす時間が仕事の大半でした。また、動物が快適に過ごせるように遊び場などを配置する環境エンリッチメントにも取り組みました、ニフレルに異動してからは魚類の飼育担当となり、水槽の濾過設備等について学び直しました。またこちらに来てからはお客様に展示を説明する機会が増えています。卒論ではクラゲを扱いましたが、ニフレルにいるクラゲは1種類だけなので、クラゲの知識を活かす場面は少ないです。それでもクラゲ飼育についての提案はしてきました。教育拠点の公開実習で学んだ魚類の解剖は、水族館での仕事に直接役に立っており、今でも当時のノートを取り出して確認することがよくあります。また卒論では、データの取り方の基本を学べたため、これも飼育の現場で役立っています。さらに、舞鶴で卒論に取り組んでいた頃には、大学院生の先輩たちの調査に同行する機会も多く、船に乗ったり、桟橋から魚やクラゲを採集したりと、楽しく研究経験を積むことができました。」

20180910テッポウウオ連休最終日のお忙しい中、快くインタビューに応じてくれた近藤さん。この後すぐに、おおぜいのお客様が集まるテッポウウオの展示水槽に出向き、魚が的に向かって射的をする行動の説明をしていました。近藤さんが夢を実現し、また水族館の現場で活躍する上で、舞鶴水産実験所の拠点事業が多少なりともお役に立っているようです(文責:益田玲爾、2018年7月)。

 

 

 

卒業生 山守瑠奈さん(2012年度秋季公開実習)

山守瑠奈さんは、京都大学農学部1年生であった2012年に舞鶴水産実験所の秋季公開実習に参加しました。山守さんは、2016年に京都大学人間・環境学研究科修士課程に進学し、2018年現在は博士課程1年生です。彼女の研究成果は、すでに6本が国際誌に公表されており、国際学会や国内学会でも数々の賞を受賞されています。私も山守さんの調査に立ち会ったことがありますが、激しい波が打ち付ける環境でウニの巣穴に住み込む貝類とその近縁の自由生活種のデータをコツコツととって研究する姿に感銘を受けました。山守さんに、現在の研究と舞鶴での実習について、お話を聞きました。

山守さん調査風景「私は海洋生物の自然史を研究しています。日本各地の海でのフィールド調査や室内での観察・実験を通し、海洋生物の進化史や環境への適応の様相の解明に取り組んでいます。特に今専門にしているのは貝類で、他の生物との共生を通して貝の生態や貝殻の形がどのように変化してきたかを調べています。学部生の時は各地の海の様々な生物に触れるのが楽しくて、色々な大学の臨海実習に参加しました。中でも舞鶴での臨海実習は今でも記憶に鮮やかで、体を使うシュノーケル調査や室内での魚の詳細な解剖・生理活性実験等の経験や知識は、しばしば研究を支えてくれています。生物の不思議について夜中まで夢中に語り合ったことも忘れられません。」

私自身、山守さんとはじめて出会ったのは舞鶴水産実験所での実習でした。私は、中学校の社会科の教員を目指していたのですが、彼女との出会いを経て、気がついたら海洋生物の研究者となっていました。公開臨海実習では、実習内容だけではなく、他大学の実習生との交流も楽しみの一つです。(文責:邉見由美、2018年9月)