3.共同利用研究
舞鶴水産実験所は他大学の学生が当実験所を利用して実施する卒業論文、修士論文、博士論文の研究(他大学卒業・修士・博士論文研究)を公募しています。
応募資格:
国立大学法人と公立大学および私立大学に所属する学部生もしくは大学院生であり、舞鶴水産実験所を利用して研究活動の一部を実施することを希望する者。
応募方法:
申請書類に必要事項を記入の上、郵送、FAX、電子メール添付のいずれかの方法により提出して下さい。共同利用研究申込書は3月15日以前のできるだけ早い時期に、実験所利用申込書は利用1週間前までに、実験所宿泊施設使用申込書は利用前日までに提出して下さい。なお、書類は以下のリンクよりダウンロード可能です。
共同利用研究申込書(2019年5月改定)
舞鶴水産実験所利用申込書(2019年5月改定)
舞鶴水産実験所実習宿泊棟使用申込書(2020年3月改定)
連絡先:
〒625-0086 京都府舞鶴市長浜番外地 京都大学フィールド科学教育研究センター 舞鶴水産実験所
電話:0773-62-5512、FAX:0773-62-5513、E-mail:maizurukyoten*mail2.adm.kyoto-u.ac.jp(*を@に変えてください)
その他:
当実験所の教員と研究員および技術職員が研究を補助いたします。当実験所において利用可能な施設や機器についてはホームページに掲載されているリストを確認 の上、個別にお問い合わせください。なお、舞鶴湾内およびその周辺水域において潜水を実施される場合は、1カ月以上前に海上保安庁に申請書を提出する必要がありますので、別途ご相談下さい。現在は東京大学、東京海洋大学、広島大学から学生を受け入れています。
事例紹介:
中村政裕さん(東京大学大気海洋研究所 沿岸保全学分野 博士課程)
「通し回遊の起源と進化過程に関する生理・行動学的研究」
-海と川を行き来する回遊魚(通し回遊魚)は、いかにして進化したのか?-
毎年、秋になると「今年もサケが生まれ故郷の川に戻ってきました」というニュースが流れます。また、冬になると、「今年も海から川に上ってくるウナギの稚魚である、シラスウナギを狙った漁が各地で解禁となりました」というニュースが報じられます。私たちにとって大変身近なこれらの魚は、両種とも海と川を行き来する魚です。こうした、一生のうちに海と川の両方を回遊する魚を特に“通し回遊魚”と言います。この通し回遊魚について、最近の研究で、面白いことがわかりました。サケはもともと、コイやフナのように回遊しない淡水魚であり、ウナギは、川魚のイメージとはほど遠い、深海魚であったことがわかったのです。
それでは、回遊しないこれらの先祖はどのようにしてサケやウナギのような回遊魚になったのでしょうか?淡水魚にとって海に入るということは、大変なことです。例えばキンギョを海水に移すと、たちどころに死んでしまいます。これは海産魚が川に入る場合も同様で、アジやサンマなどの海産魚が川を泳いでいる姿は想像しにくく、実際に彼らは川の淡水域では生きられません。これは、海水と川の水では塩分が全く違うか らです。海と川の境目である河口には、両者の中間の塩分である汽水域が広がります。ここであれば、比較的簡単に入ることが出来ます。もともと住んでいた場所と塩分が少しくらい違っても、すぐに死ぬことはないからです。サケやウナギなどの通し回遊魚も、進化のはじまりの段階では、河口域への回遊をしていたと考えられます。現在でも、こうした回遊を行う魚はたくさんおり、彼らは“周縁魚”と呼ばれています(写真は周縁魚として知られるスズキ、クロダイ、ウグイの稚魚)。
釣りをする人であれば、すぐにわかると思いますが、河口には海や川の魚が結構いるものです。海産魚だとスズキやクロダイ、淡水魚だとウグイなどが周縁魚にあたり、彼らと通し回遊魚で回遊のメカニズムを比べれば、通し回遊の進化過程の一端を明らかにすることができます。通し回遊の進化過程の一部である、周縁魚から通し回遊魚が進化する過程で、どのような仕組みが獲得されてきたのかを明らかにすることを目的に、私は研究をしています。私は東京大学に所属していますが、舞鶴水産実験所は調査地である河川や海が近く、また蛇口をひねれば海水や空気が出てくる恵まれた飼育実験施設を有しています。こうした理由から私は共同利用研究システムを活用して実験をさせて頂いています(写真は由良川における調査風景)。
近藤 桜さん(名城大学農学部 生物環境科学科 4年生)
昨年、私は若狭湾秋季水産海洋生物実習に参加したのをきっかけに、舞鶴水産実験所の存在を知りました。目の前には水産を研究する皆さんのロマンを掻き立てる舞鶴湾!振り向けば四季折々の木々が生い茂る山に挟まれた自然豊かな場所です。天気の良い日には敷地内にある桟橋でよく日向ぼっこをして癒されています♪
私は大学の卒業論文として魚類による稚クラゲの捕食について研究しているところです。水族館で見るクラゲは本当に美しく、見る人を癒してくれます。しかし、近年はクラゲの大量発生により漁師さんやビーチで泳ぐ観光客が被害を受けています。そこで、クラゲ捕食者として有名なカワハギに舞鶴湾で採集したクラゲを餌として与え、どのような環境条件ならば、クラゲを食べるのかを追究しています。水温の低下により魚類は摂餌率が落ちるので、舞鶴のクラゲ達は寒い時期に一斉に発生することで魚類の捕食から逃れている可能性があります。近い将来、暖冬傾向が進むと、魚類のクラゲ摂食量が増え、クラゲの大量発生が減るかもしれません。
知識も乏しく、未熟な私にも、実験所の皆さんが「研究」というものについて親切に丁寧に教えて下さるので、毎日本当に勉強になっています。舞鶴の魅力に惹かれた方、是非舞鶴へ(^^)/