6.共同利用研究の成果

6.共同利用研究の成果

最優秀ポスター賞(第63回日本生態学会 生物多様性分野 2016年3月 仙台)

「環境DNAの断片長による見た目の分解速度の違い」

徐寿明(神戸大発達)・村上弘章(京大フィールド研舞鶴)・坂田雅之(神戸大発達)・益田玲爾(京大フィールド研舞鶴)・山本哲史・源利文(神戸大発達)

環境DNAマアジ飼育(160614)神戸大学発達科学部4年生の徐寿明さん(その後神戸大学大学院に進学)が舞鶴水産実験所で行った共同利用研究が、上記の賞を受賞しました。環境DNA技術は、水を採取してそこからDNAを抽出して分析し、生息する魚の種類や個体数を推定する技術ですが、魚がいつそこにいたかという情報については、これまでの手法では不明です。本研究では、DNA断片のうち長いものほど速く分解されることを利用して、この問題を解決する道を拓きました。まず、マアジに特異的なプライマーを、長さが異なる2種類について準備します。次に、マアジを水槽で飼育して海水を採取し、経時的に分析することで、長い断片は短い断片よりも速く分解されることを示しました。さらに、舞鶴湾内の広域で行った採水試料を分析し、舞鶴漁港の近くで採水した試料水からは短いDNA断片(すなわち水揚げされたマアジ由来の古いDNA)、また魚群探知機でマアジの多いことを確認した地点では長いDNA断片(生きたマアジ由来の新しいDNA)が多く検出されることを確認しました。以上の研究は、環境DNAに時間情報を持たせられた点が画期的と評価されています。成果についてとりまとめた論文は、徐さんを筆頭著者、指導教員である神戸大学の源利文を責任著者として、国際誌に投稿中です。

*写真はマアジを飼育した水槽から海水を採取する徐さんと神戸大・京都大の大学院生ら(2016年6月14日、舞鶴水産実験所飼育棟)

最優秀ポスター賞(第62回日本生態学会 保全分野 2015年3月 鹿児島)

「環境DNAを用いたクラゲ類の分布調査 〜舞鶴湾のアカクラゲを例に〜」

福田向芳(神戸大発達)・益田玲爾(京大フィールド研)・藤原綾香・山本哲史・源利文(神戸大発達)

環境DNAアカクラゲ目視(140617)神戸大学の卒業研究の一環で舞鶴水産実験所の共同利用研究を利用した福田向芳さんが、上記の賞を受賞しました。この研究では、まずアカクラゲの種特異的なプライマーを神戸大学で作製しました。次に、舞鶴湾で採集したアカクラゲを舞鶴水産実験所の水槽で飼育し、その排水から本種のDNAを検出できることを確認しました。続いて、教育研究船「緑洋丸」で舞鶴湾内を航走し、アカクラゲを計数するとともに採水を行い、クラゲの水平的な分布と採水中のDNA量が相関することを確かめました。さらに、舞鶴水産実験所の桟橋で毎朝行っているクラゲの計数結果と、桟橋での採水から検出されるクラゲのDNA断片数の季節変化が一致することも確かめました。一連の結果は、クラゲの環境DNAについての世界で初めての研究となります。成果論文として、以下が出版されました。

Minamoto T, Fukuda M, Katsuhara KR, Fujiwara A, Hidaka S, Yamamoto S, Takahashi K, Masuda R (2017). Environmental DNA reflects spatial and temporal jellyfish distribution. PLOS ONE 12(2): e0173073.

*写真は「緑洋丸」上からクラゲの数を記録する神戸大学4年生(当時)の福田さんと藤原さん(2014年6月17日、舞鶴湾内)

学生ポスター賞(魚類栄養・餌料シンポジウムISFNF 2014年5月 ケアンズ)

Gene expression of DHA and taurine synthesizing enzymes in Japanese flounder Paralichthys olivaceus juveniles fed on rotifers and Artemia nauplii enriched with DHA and taurine

Tomoko Itoh1, Yutaka Haga1, Reiji Masuda2, Yohei Indei1, Hikari Ohtoshi1, Naoki Kabeya1, Mizumo Chiba1, Goro Yoshizaki1, Shuichi Satoh1

1Graduate School of Marine Science and Technology, Tokyo University of Marine Science and Technology, Minato, Tokyo 108-8477, Japan

2Maizuru Fisheries Research Station, Kyoto University, Nagahama, Maizuru, Kyoto 625-0086, Japan

ヒラメ飼育実験(140626)共同利用研究を利用して舞鶴水産実験所において行った東京海洋大学・水族栄養学研究室の伊藤智子さん(当時4年生,現在は博士課程に在学)の研究の成果が、上記の賞を受賞しました。伊藤さんは舞鶴水産実験所の飼育棟にて、DHAおよびタウリンの投与または欠乏の条件でヒラメの仔稚魚を飼育しました。飼育後のヒラメを海洋大学へ持ち帰って分析し、成長や遺伝子発現を調べています。成長はDHAおよびタウリンの投与で向上することが示されるとともに、タウリン合成酵素遺伝子の発現には差は見られなかったものの、DHA合成酵素の発現には給餌条件により有意な変化が見られました。成果論文については、国際誌への投稿へ向けてとりまとめ中です。

*写真はヒラメの飼育実験について説明する伊藤さんと、指導する芳賀穣准教授(2014年6月26日、舞鶴水産実験所飼育棟)